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体験参加のかたへ 安全にヨガをするために

骨のぶつかり その1

長文になりましたので、お時間無いかたは、要約をお読みください。
お伝えしたいのは『人と同じ完成形を作ろうとすると危険な場合があり、骨格上受け入れるしかない限界もある』ということです。

要約

・骨格が違えばポーズの完成形も違う。ポーズの深まりを妨げているのが骨のぶつかりである場合、圧迫を強めるような方向で『頑張ってしまう』のは危険
・筋肉の伸び具合と骨の衝突。両方を感じ取ることが必要
・具体例
『股関節:前屈/開脚等』『足首:しゃがみ込み/アキレス腱伸ばし』『肩周辺:万歳の角度』『手首(橈骨と尺骨の比率):腕立て伏せ』
・程良い丁寧な圧迫は骨密度を上げる

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まずは骨格が違うために人と同じポーズを取りたくても取れない場合のうち、骨同士が標準より早くぶつかる、というケースです。

下の写真の赤丸で囲んである部位はヨガのポーズでよく問題になる箇所です。
人と同じように前屈できない、万歳できない、しゃがんだり前後開脚で立った時等に後ろのカカトが床につかない、といったことと関係があります。

こういった場合、ただ関係のある筋肉がまだ硬いからという理由に加えて、骨のぶつかりが関わっている場合があります。
例えば子どもの頃はカカトをつけてしゃがみ込むことができていたなら、生まれつきの骨格ではぶつかりはなかったと思われますが、その後ケガなどで変化が起こっていないとも限りません。なので、どこであれストップがかかっていると感じる時にはいつも、(筋肉の)伸び不足だけが引き留めているのか、骨の衝突に達しているのか、を探る意識が大切です。衝突が原因なのに強硬にこすり続けていれば、行う頻度によりますが、いずれ傷めます。

そして筋肉のほうはヨガを続けるうちに変わる(伸びるようになる)可能性が十分にありますが、骨の衝突は変えようがありません。なので自分の個性として受け入れて、無理のない範囲で精一杯のポーズを取ることがとても大切です。

写真①は前屈時の股関節。(人形の都合により、長座でも開脚でもない半端な脚の開き具合になっております。)
骨盤と大腿骨のかみ合わせの形により早く衝突が起こると、前屈はそこでストップです。ハムストリングスやおしりをいくらほぐしても、(ほぐすことには大きな意味がありますが)どこまで倒れられるかという点では、そこまでです。
これは骨盤と大腿骨のあらゆる場所での衝突にあてはまる話で、左右に大きく開脚して立った状態から骨盤を横へ倒していく三角のポーズなどでも、衝突がどの角度で起こるかは人それぞれ。
ここでは全てを取り上げませんが、人と同じところまで!という頑張り方は、いくつかのポーズでは体にとって拷問になる、ということをどうぞ頭の片隅に。
拷問を避けるには、こういったことを知っておくのも助けになりますが、なんといっても、観察力が必要です。

②は足首の前の部分をお見せしています。(またまた人形の都合により、しゃがむ姿勢や、足の背屈=爪先とスネを近づけること、をお見せできずすみません。) 
股関節同様、すでに衝突が起こっていれば、立ち姿勢でそれ以上カカトを床に近づけることはできません。

③④の肩部分は上腕骨と鎖骨のぶつかりの例。
構造の違いで、まったくぶつかることなく腕をまっすぐ上へ、あるいはもっと後ろへも伸ばせる人もいれば、やや前方で止まる人もいます。床に手をついて脇を伸ばして行うダウンドッグのポーズなどで「自分は脇が伸び切らなくてカッコ悪い」と感じる人がいるようですが、それは個性と受け止めるしかありません。脇を伸ばしきる爽快感は少し減るかもしれませんが、ご自身の精一杯を尽くしてくだされば十分で、それ以上の角度を追求するのは危険です。

手首にも同様の問題があります。

『骨単』P2をお借りしています

橈骨と尺骨については、日本人の9割が橈骨が長く、1割は尺骨が長いとのこと。この1割の人たちは手のひらを床について(手首を反らして)体重をかけることには、実はかなりの慎重さが要ります。

私は自分の『長い尺骨』(=小指側の手根骨と衝突を起こしやすい)という個性を知りませんでした。それは仕方がないとして、ちゃんとしたヨガを学ぶ前は、観察の必要性も、強度の衝突の繰り返しが生む結果も、知らないままでした。
その結果、自分の体が発している声(痛み)を無視して、避けるべきやり方で腕立て伏せ(的な動き)をやみくもに繰り返して、ヨガの指導者養成合宿直前に手首を傷め、その後長くサポーターと縁が切れませんでした。何事にも程度問題というものがあり、おそらくやり過ぎた例ではあって、また私がとても鈍い人間であることの証明でもあります。(違和感を、筋力がついたら解決するのだろうくらいに受け止めていたのです。)
どうかどなたも傷めずにヨガを、と私が強く願うのは、こんな体験があるからです。

脱線お許しください。

このように骨の衝突が起こっている場合、強引にポーズを深めようとすると危険ですが、丁寧に観察しながらの程良い圧迫は骨密度を上げるとされています。それに、まだ十分に伸ばせてやっていない筋肉を伸ばすのももちろん良いことなので、こういった箇所はむしろ丁寧な観察を促してくれるギフトと捉えてもよいのかもしれません。私も尺骨の長い手首、大事に付き合っていきたいと思っています。

骨のぶつかりの例を見ていただきました。

ぶつかり以外に、骨の長さ(比率)を考えると行わないほうがいいポーズ、などもありますが、それはまたいずれ。

その2では寄りかかり(ロック、過伸展)の話をします。やはり骨の話です。